アピール:衆参議院憲法調査会の最終報告書提出に抗議する
衆参議院憲法調査会の
最終報告書提出に抗議する
本日、衆議院憲法調査会は憲法「改正」に向けた最終報告書を採択し、衆議院議長に提出しました。参議院憲法調査会も同様の報告書を近く提出するとのことです。しかし、これには以下に述べるように様々な問題があり、私たちは強く抗議します。
1.政府・与党は憲法を骨抜きにしようとしています。
もともと憲法は人々の自由・人権をまもるために国家権力を抑制することを目的とし、したがって憲法改正も国民から求めるものです。ところが今回は政府・与党が一体となって国会に憲法調査会を設置しました。国民が求めたものでないことは、最近の世論調査からも明らかです。国民が政府に求める政策課題は、年金・福祉などの社会保障や景気対策などであって、憲法改正ではありません。これでは、政府・与党が国家権力の行使にじゃまだから憲法を変えようとしているとしかいいようがありません。今回の最終報告書提出は、人々の自由・人権を守る盾である憲法を国家が骨抜きにしようとするものです。
2.最終報告書の内容は国民の意思に反しています。
同報告書によれば、戦争放棄や戦力不保持などを定めた第9条を変えて、自衛権や自衛隊について何らかの憲法上の措置を求める見解や、集団的自衛権を認める見解、非常事態関係の規定を設ける見解が多数であるとしています。しかし、憲法の平和主義を否定することは許されません。しかも、これは国民世論とかけ離れた見解です。世論調査では、第9条の「改正」に反対する意見が賛成する意見を上回っています(2004年4月実施「朝日新聞」、2005年2月実施フジテレビ「報道2001年」、2005年3月実施「読売新聞」、2005年4月実施「NHK」)。非常事態に関する規定については言うにおよびません。今回の最終報告書は、国民が望まない方向への憲法「改正」を打ち出すもので、国民の意思に反しています。
3.新しい権利や制度も多くを期待できません。
最終報告書は、知る権利、プライバシー権、環境権などの新しい人権を規定することや憲法裁判所を設置することなどを求める見解が多数としています。しかし、最終報告書が、これらの新しい規定を突破口としてあるいはこれと抱き合わせにして、「改正」の真の目的である第9条の「改正」を一気に進めることをもくろんでいることは明白です。しかも、これらの新しい規定も、第9条が「改正」されて戦争やその準備が始まった場合にはなんらの意味ももちません。また、非軍事的手段による平和の創造から180度舵を切って軍事力による「平和」へと憲法の根本理念を変更した場合、日常からもこれらの権利・制度が軍事優先の理念の前に制限されることも明らかです。第9条の「改正」と一体となる以上、新しい権利にも制度にも多くを期待することはできません。
私たちは、今回の両議院憲法調査会の最終報告書提出が、国家による憲法の骨抜きに道を開くものであり、第9条の「改正」など国民の意思に反することなどから、強く抗議し、国会が憲法「改正」にむけた作業を直ちにやめるように求めます。
2005年4月15日
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(写真は記者会見の模様です。)